ボツリヌストキシン治療とは「ボツリヌストキシン製剤」をあごの筋肉である「咬筋(こうきん)」に注射することにより、筋肉の働きを抑えることを目的とした治療法です。
よく耳にする「ボトックス治療」もボツリヌストキシン治療の1つです。アラガン社が製造している「ボトックス」という薬剤から名付けられたものが浸透し、広く使われるようになりました。
ボツリヌストキシン治療というと、美容外科などでの「しわ・たるみ」の治療を思い浮かべる方も多いと思います。そのため、歯科医院での治療というとあまりイメージがわかないかもしれません。
実は、歯科医院におけるボツリヌストキシン治療は、歯ぎしりや食いしばり治療の1つとして行われるものです。歯に負担がかかることで引き起こされる様々な問題を解消し、大切な歯とあごの関節を守ります。
歯ぎしりや食いしばりは、歯に対して想像以上に大きな負担がかかります。その原因はあまりはっきりとしていませんが、多くは無意識のうちに行われる癖のようなもので、ストレスが関与していると言われています。また、日常的にスポーツを行う人は瞬発力を発揮するために歯を食いしばっていることもあります。
歯ぎしりや食いしばりによって歯に力がかかり続けると、歯がすり減ったり割れたりするリスクがあるだけでなく、歯の内部の組織が露出して歯がしみる「知覚過敏」が引き起こされたり、神経がダメージを受けて痛みが出やすくなったりします。
また、歯ぎしりや食いしばりはあごの関節にも負担をかけるため、あごの痛みや口の開けづらさの原因となる「顎関節症」の発症にもつながります。
さらに、歯ぎしりや食いしばりは歯周病のリスクにもなります。両者は一見関係ないように思えますが、歯ぎしりや食いしばりは歯を支えているあごの骨にも影響を及ぼし、骨が吸収されて歯が揺れたり、歯の喪失につながったりする恐れもあります。
ボツリヌストキシン治療により緊張したあごの筋肉を緩め、噛みしめる力をコントロールすることで、大切な歯の損傷を予防し関節の負担を減らします。歯科医院でのボツリヌストキシン治療は、見た目の美しさを獲得するための治療とは異なり、身体機能の改善やお口周りの健康維持のみを目的に行います。
ボツリヌストキシン治療は食いしばりや歯ぎしりの改善に効果的です。
自覚のある方はもちろんですが、自覚がない場合でも、以下のような症状があるときは気づかないうちに歯ぎしりや食いしばりをしているかもしれません。当てはまるものがあればぜひご相談ください
鏡でお口の中を見た時に、舌の側面や頬の内側の粘膜に歯の跡が付いていませんか?
お口を閉じたとき、上の歯と下の歯同士は接触していないのが正常です。しかし食いしばりの癖があると、常に歯が舌や頬に押し付けられ、歯型が付いてしまいます。
耳の前あたりにある、口を開け閉めしたときに動く部分が顎関節です。
歯ぎしりや食いしばりによって顎関節に過度な負担がかかり続けると、「口が開きづらい」、「顎関節に痛みがある」、「顎関節から音がする」などの顎関節症の症状が出る場合があります。
あごの筋肉が緊張していると、あごの筋肉と繋がっている首や肩の筋肉、こめかみの筋肉にも影響を及ぼします。その結果、慢性的な肩こりや首こりに悩まされたり、頭痛が頻繁に起こったりする可能性があります。
原因がわからない頭痛や肩こりは、歯ぎしりや食いしばりが関わっているかもしれません。
眠っている間に歯ぎしりや食いしばりをしている場合、目が覚めたときに顔周りの筋肉の違和感やあごの関節の痛み、だるさなどを感じることがあります。
詰め物や被せ物が繰り返し外れたり壊れたりする場合は、歯ぎしりや食いしばりを疑ってみましょう。噛み合わせの癖によって、修復した部位に力がかかっていることが原因かもしれません。
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、歯がすり減ったり亀裂が入ったりしてしみることがあります。また、歯に非常に強い力が加わると歯の根元部分が欠ける「くさび状欠損」を引き起こすことがあり、知覚過敏が生じる場合もあります。
歯ぎしりや食いしばりは歯周病を悪化させることが知られています。「歯周病治療や歯磨きをしっかり行っているにもかかわらず良くならない!」という方は、歯ぎしりや食いしばりの癖がないか探ってみましょう。
ボツリヌストキシン製剤は「ボツリヌス菌」という細菌が作り出すタンパク質を加工して作られる治療薬です。
通常、全身の筋肉は脳の神経からの指令で収縮します。ボツリヌストキシン製剤はこの指令を部分的に妨げ、あごの筋肉のこわばりを緩和させる効果があります。
もともとボツリヌス菌は神経に作用する毒を分泌し、筋肉を麻痺させる力があります。その力を利用したものがボツリヌストキシン製剤ですが、治療の際は菌や毒素をそのまま使用するわけではありません。治療用に加工された薬を注射するため、人の身体に悪影響はなく安心して受けていただける治療です。
当院で取り扱っているボツリヌストキシン製剤は、韓国の大手医薬品メーカーであるデウン製薬が製造した「ナボタ(NABOTA)」です。
ナボタ(NABOTA)は、開発国である韓国のKFDA(韓国食品医薬品安全庁)に認可されているとともに、品質管理にかかわる機関として世界屈指の米国FDA (米国食品医薬品局)の品質基準・安全基準もクリアしたボツリヌストキシン製剤です。
FDAは日本でいう厚生労働省のような存在であり、食品や医薬品などの販売・流通において許可あるいは違反品の取り締まりを行うなどの行政業務を担っています。米国FDAが承認しているボツリヌストキシン製剤は、ナボタ(NABOTA)とアラガン社のボトックスビスタのみです。
当院で個人輸入しています。
デウン製薬から代理店を経て購入しているものです。
医薬品医療機器等法上の承認:未承認
国内承認医薬品等の有無:類似製品の販売はありません。
諸外国における安全性等に係る情報に関して:米国FDA・韓国KFDAによる安全基準をクリアしています。
まずはお口の中を拝見し、歯や歯ぐき、あごの骨の状態や、あごの関節周りの筋肉の様子を確認して、歯ぎしりや食いしばりの診断を行います。あごの骨や歯をより詳しく調べるために、レントゲン写真を撮影することもあります。
治療方針を決定するために、患者様の生活習慣や現在のお悩みなどもお伺いします。
また、治療について不安なことや質問などがあれば、遠慮なくご相談ください。
治療をご希望いただいた場合は、具体的な日程などを決定していきます。
左右の咬筋にボツリヌストキシン製剤を注入します。
所要時間の目安は10〜15分程度で、比較的短時間での処置が可能です。
約1週間後に再度ご来院いただき、治療部位の状態を確認します。
通常、治療後の効果が最も感じられるのは施術後3〜4日目からで、効果は2週間程度で安定します。
ボツリヌストキシン製剤の効果は一般的に3〜6ヶ月間持続しますが、個人差があります。効果が薄れてきた場合は再び治療を受けていただくことで効果を持続させることが可能であり、治療頻度や具体的なケアプランについては患者様とご相談しながら決定していきます。
ボツリヌストキシン製剤の効果をより高めるため、治療当日から次回のご来院日までは以下のことに気をつけながらお過ごしいただきます。
長時間の入浴は治療から2〜3日程度控えましょう。血行が促されることで、注射した部位に内出血や腫れなどの副反応が起こりやすくなる可能性があります。
治療当日は湯舟に入ることは避け、シャワーを浴びる程度にしておくことをおすすめします。
また、ボツリヌストキシン製剤の効果が弱まる可能性があるため、サウナなど高温になる場所もしばらく控えてください。
注射部位は揉まないようにしましょう。注入したボツリヌストキシン製剤が他の部分に広がる可能性があります。フェイスマッサージなどもしばらくお休みしてください。
お顔のメイクアップについては、治療部位を過度に刺激することがなければ行っていただいて問題ありません。
治療後はお仕事や家事、通学なども普段と同じようにしていただいて構いませんが、血行が良くなると副反応が助長されるため、激しい運動は1週間程度控えるようにしてください。
治療当日は飲酒を控えるようにしてください。アルコールには血行を促進する作用があるため、副反応による内出血や腫れの原因となります。
ボツリヌストキシン治療は安全性の高い治療ではありますが、患者様のお身体の状態や条件によっては治療が難しい場合があります。
上記に該当する患者様には、ボツリヌストキシン治療を行うことができない可能性があります。治療前にご相談ください。
また、胎児への影響を予防するため、ボツリヌストキシン治療後は男女ともに3ヶ月間の避妊が推奨されています。
ボツリヌストキシン治療 | 33,000円(税込) |
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当院では、口の中や口周りの組織について専門的に学んでいる歯科医師がボツリヌストキシン治療を行うことで、機能的にバランスのとれた結果を導くことができると考えています。
歯ぎしりや食いしばりにお悩みの方にとって、ボツリヌストキシン治療は効果的な解決策です。その効果は一時的ではありますが、歯の損傷や痛みの進行を防ぎ、あごの関節を休ませる時間を与えてくれます。
安心して治療を受けていただけるよう、随時ご相談も受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。患者様ひとりひとりに合わせたケアプランを立て、笑顔と健康を守るお手伝いをいたします。
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