矯正歯科とは名前が示す通り、歯の矯正治療を専門的に行う診療科です。歯に様々な種類の装置を付けて歯を移動させていき、不正な歯並びや噛み合わせの正常な状態へと治療していきます。
矯正治療=歯並びを良くすると聞くと、多くの人が「見た目の問題」を改善するためのものだと考えるかもしれません。たしかに歯並びを良くすることでコンプレックスを解消でき、明るく振る舞えることもあります。しかし歯並びや噛み合わせを良くすることはそのような心的な要因だけではなく、肉体面にも良い効果をもたらすことができるのです。そのため矯正歯科は「患者様の心身を共に改善する治療」だということができるかもしれません。
そもそもなぜ歯並びは悪くなるのでしょうか。
「日本人は人種的に顎が小さいために生えてくるスペースが限られている」という説を聞くことがあります。たしかにそれ(先天的なもの)が一因となっている人もいますが、多くの場合は生活習慣などの後天的なものが原因で歯並びは悪くなっています。
以下のような習慣や歯並びを悪くするリスクがあります。
成長期に歯や顎に不自然に力をかけ続ける癖があると、それが歯並びや噛み合わせに悪い影響を及ぼすことがあります。頬杖をつく、唇や爪を噛む、指しゃぶりなどはその一例です。
乳歯の状態でひどいむし歯になり、抜歯を行うと周囲の歯が動いてしまい、生えてくる永久歯が曲がってしまうことがあります。それが原因で全体の歯並びや噛み合わせに悪化することもあり得ます。また永久歯もむし歯の状態を放置していると周囲の歯や歯茎に悪影響を与えます。
本来の呼吸器官である鼻ではなく口で呼吸する癖がつくと、顎の形の生育に悪い影響を及ぼすことがあります。具体的には下顎が出るようになったり、出っ歯になったりとコンプレックスに陥りやすい状態につながります。
あまり噛む必要のない柔らかいものを食べ続けたり、あまり噛まずに飲み込んだりする癖がついていると顎の発育が充分でなくなることがあります。子供のうちから歯応えのあるものを食べ、しっかりと噛む習慣を心がけましょう。
唇や頬、舌の裏側についている筋のことを小帯(しょうたい)といいます。これが太過ぎたりまたは短過ぎたりすると歯並びに悪い影響を及ぼします。
両親から受け継ぐ遺伝によって顎の形や大きさ、歯並びはある程度決まってきます。元々歯並びが悪くなる要素を持っている場合にはとくに気を付けなければなりません。
以下のような状態なら矯正治療がすすめられます。
歯並びが左右や前後にずれている、がたがたの状態です。「乱ぐい歯」ともいいます。
歯が重なっている状態だと歯ブラシが奥や細部まで届かず、歯垢や歯石が溜まりやすくなり、むし歯や歯周病にかかりやすくなってしまいます。
基本的には歯が生えるスペースが足りていないために起こるので、成長期の子供なら矯正装置を用いてそのスペースを確保します。成長期を過ぎている大人なら他の歯を抜くことでスペースを設けます。
上顎が前に出ている、いわるゆ「出っ歯」の状態です。
上顎の過剰な成長や、反対に下顎の成長が不足していることなどから引き起こります。また前歯が傾いて生えている場合もそうなります。
口が完全に閉じきらないためドライマウスの状態になりやすく、むし歯や歯周病だけでなく口臭が発生することがあります。
成長期の子供なら矯正装置を用いて歯並びを整えます。成長期を過ぎている大人なら他の歯を抜くことでスペースを設けます。
下顎が上顎よりも前に出ている、いわるゆ「受け口」の状態です。
発音(特にサ行やタ行)が不明瞭になりやすく、コミュニケーションに支障を来たすことがあります。
子供の場合は下顎の生育を抑える装置、あるいは上顎の生育を促す装置をつけたり、マウスピースをはめたりすることで噛み合わせを正していきます。大人の場合はまだ軽度な状態であれば矯正装置が使えますが、ひどい場合には外科的手術で顎の骨を切断することが必要とされることもあります。そのためその傾向が確認出来たら少しでも早い治療が肝心となります。
前歯に隙間が生まれる、「すきっ歯」の状態です。一般的には発音、滑舌に悪影響をもたらすといわれています。他の治療法と同じように子供の頃なら比較的簡単な治療法で済みますが、大人だと顎の骨を切断しなければならないこともあります。
最も一般的な矯正法で、ワイヤーを矯正する歯の表側に回す形で固定し、徐々に正しい位置へと移動させていきます。以前は金属の素材がよく用いられていましたが、金属特有の光沢感が目立つため、白色で自然な仕上がりになるものが今では多用されています。
歯の表側ではなく裏側に装置をつけることで矯正していきます。そのため目立ちにくく、周囲に矯正していることをあまり知られたくないという方におすすめです。しかし舌が矯正装置に常時触れているため、初めは違和感を覚える人もいるかもしれません。
マルチブラケット法と似ている矯正法ですが、歯と装置のあいだに起こる摩擦が少なく、治療が終わるまでの時間が短くなっています。その代わりマルチブラケット法よりも治療費は高く設定されています。
この方法では矯正装置を歯の表面に装着させる必要がありません。マウスピースをはめることで歯並びを正しい位置に移動させていきます。このマウスピースは多くの場合オーダーメイドで作製され、透明で薄く、周囲の人に気づかれることがほとんどありません。着脱式のため食事の際に外すことができ、メンテナンスも比較的容易という点にも特徴があります。しかし他の矯正法に比べると歯を移動させる力が小さいため、重度の状態だと効果が出にくいことがあります。
歯並びが全体的に悪いのではなく、一部分のみ悪い場合に用いられます。その分、治療に必要な期間が短くて済み、費用も抑えることが可能です。
一般的な矯正法のように歯を動かさず、歯並びの乱れた歯を削り、その上に自然な仕上がりに見えるセラミック製の義歯をかぶせます。歯の移動を伴わないため短い期間で治療ができますが、歯を削らなければなりません。歯は削られることで歯の寿命が縮んでしまうことがあります。
子供は乳歯から永久歯に生え変わるため、歯列矯正もそれに合わせて二回の機会に分けて行うことがほとんどです。
以下は一般的な子供の歯列矯正の方法です
一期治療
混合歯列期(乳歯と永久歯が口内に混生している時期)に行う歯列矯正です。永久歯が生え始める5歳から、永久歯が生え揃う前の11歳頃が対象となります。歯が生えてくるスペースを確保したり、顎の上下のバランスを調節することが主となります。本格的な治療ではなく、簡易的な矯正装置を用いた予備的な治療となります。
治療に要する期間は平均1~2年間ほどで、そのあいだは歯科医院で2ヶ月に一度ほどのペースで医師の診察を受けます。
二期治療
永久歯は一般的には11歳、12歳に生え揃うといわれています。そのため矯正装置を用いた本格的な治療はそこから始まります。ここにおいての目的は噛み合わせを正しい位置に整えることです。
2年間ほどで治療は終わりますが、そのあいだも一ヶ月に一回は通院して医師に診察を受ける必要があります。患者様ごとによって異なる場合がありますが、一般的には取り外し可能な矯正装置を長い期間にわたって装着することで歯を移動させます。
1.カウンセリング
患者様の歯の状態や口内全体のバランスを観察し、どのような治療が最も適切か、またどれくらいの期間や費用がかかるかを話し合います。
2.精密診査
歯型を取ってそれを基に模型をつくり、完成形のイメージを患者様と医師とで共有します。口だけではなく顔の写真を撮ったり、顎の骨のCTスキャン撮影をしたりすることもあります。
3.治療計画の提案
①と②を基にして治療計画を細部まで決めていきます。このとき疑問に思ったことや不明なことがあったらためらわずに医師に質問・相談しましょう。
4.矯正治療開始
矯正装置を装着して、治療を実際に開始します。ここで用いられる矯正装置はオーダーメイドのものとなります。また装置の掃除の仕方などのメンテナンス、装着時の食事の方法などの説明を受けます。
5.定期的な調整
定期的なメンテナンスのために通院が必要です。歯列の状態を確認し、時期が来ればワイヤーなどの矯正装置を取り替えます。
6.矯正装置の取り外し
歯の移動が終わると矯正装置を外すことができます。しかし治療はここで終わるわけではありません。
7.保定
歯の移動が終わって歯並びが正しくなっても、元の状態に戻る「後戻り」が起こることがあります。それを未然に防ぐためにリテーナーという保定装置を装着します。このリテーナーは着脱可能で、装着するのは基本的に就寝時です。装着の期間は2~3年で、そのあいだも経過観察のために数ヶ月に一度通院します。
矯正治療は重度のむし歯や歯周病、その他特定の疾病になっていなければ何歳からでも始めることができる治療法です。そのため大人になったら歯並びはもう良くならない……と諦めずに歯科医に一度相談してみてください。矯正治療を受けることで見た目の問題だけはなく、噛み合わせなど肉体面でもよい効果をもたらすことができます。
しかし何歳からでも治療ができるといっても、大人になってから行う矯正治療は大掛かりなものになりがちです。中には顎の骨を切断する必要がある場合もあります。早めの治療を受けることで、比較的軽度の治療で正しい歯並びを実現することができます。自身の歯並びが気になっている方、小さなお子様のお持ちの方は是非一度ご来院ください。
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